モラルハザードとはなんぞや

モラルハザード(moral hazard)とは,もちろん元々英語。この言葉の生い立ちを知らない人は,moralは道徳・倫理と翻訳し,hazardは危険と翻訳して,なんとなく,「道徳や倫理観の欠如・崩壊」を表す場面でこの言葉を使っています。

例えば,「医療ミスの隠蔽,偽装表示,官僚の天下り等々,各界のモラルハザードはとどまることを知らない」という風に。

しかし,この使い方は実は間違い。誤用です。

コンサイスカタカナ語辞典には次のように説明されています。

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モラル‐ハザード [moral hazard]
[1] 保険で,道徳的危険.被保険者の信用度や道義性などに人格的要素に関して保険者が負担する危険.保険詐欺などの危険性.〈現〉

[2] 一般に,金融機関や個人預金者が道徳的節度を失って行動する危険.〈現〉
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そう,元々は保険用語だったのです。例えば,火災保険は火災によるリスクを回避するために加入するものですが,加入者は火災保険に加入していることにより,加入していないときよりも油断しやすくなり,却って火災のリスクが高まる。また,海外の盗難保険でも,保険に入っていることにより,自分の持ち物に注意を払わなくなるかも知れません。これが保険会社にとってのモラルハザードだというわけです。

この言葉は徐々に金融用語としても使われるようになりました。例えば,銀行は破綻しても政府に助けてもらえるので経営努力をしなかったり,預金者は銀行が破綻しても預金保険などで自分のお金は保護されるので少々危なそうな銀行にも預金してしまう。このモラルハザードにさらされるのはもちろん国であり,税金を出している国民と言うことになります。

ひょっとしたら私が留学していた当時の中国もモラルハザードにさらされていたのかも知れません。多くの人は国有企業で働いていたので生活は全て保障されていました。そのせいか,仕事をさぼる人がたくさんいました。どんなに働こうが給料は一緒だから。その結果,国有企業の経営状態は急速に悪化していきました。

リスク回避のシステムがしっかりしていると,人間は楽な方楽な方に流れていってしまうようです。

今の日本はリスク回避のシステムが穴だらけです,ひょっとしたら,これが逆に良い結果をもたらすかも。リスク回避のシステムなんぞに頼ってられるかい,という大和魂がよみがえる日も近い。頑張れニッポン♪