社会システムとしての暴力

 聖人君子なんてのは作り話の中で出てくる存在であり,普通の人間は自分の欲求のままに行動します。しかし,その欲求は時として社会の安定を乱すことにもなりえる。そんな時の解決手段の1つとして暴力があります。

1.体罰・虐待

身近なところでは,家庭での躾や学校での教育においてこの暴力が使われることがあります。親も教師も子供が将来立派な社会人として生きていけるように,時として子供のお尻やほっぺたを叩きます。
ところが,最近では,これを「体罰」とか「虐待」などと称するようになり,全て「悪」だと決めつけられるようになってきました。社会からの援護射撃をもらえない教師や親は教育には非常に有効であった手段を1つ失いました。暴力が有効かどうかは賛否の分かれるところでしょうが,私個人としては有効でした。教師の理不尽な暴力でさえ,色々学ぶことができました(笑)

2.拘束・制圧

憶えている人もいるかも知れませんが,2002年に名古屋刑務所で刑務官による受刑者への暴力が問題になりました。受刑者を拘束する皮手錠を強く締め過ぎたために腸間膜を損傷させたり,糞便をまき散らす受刑者の肛門にホースから水を直接あて直腸を損傷させたなどの容疑で8人の刑務官が告訴されたのです。皮手錠をしたのは暴れる受刑者を大人しくさせるため,水をかけたのは洗浄のためです。皮手錠→腸間膜損傷,水をかける→直腸損傷,それぞれの因果関係についてはいまだはっきりせず,今なお裁判は継続中です。

しかし,はっきりしていることもあります。この事件が起こって以降,刑務所内の治安が悪化していると言うことです。つまり,刑務所内で暴れる受刑者を取り押さえる際,皮手錠などは使えなくなってしまったのです。受刑者が怪我をしないように注意しつつ数人がかりでなんとか抑えつけるしか方法が無くなったのです。

名古屋刑務所で告訴された刑務官はみな仕事熱心だったという話もあります。刑務所内で受刑者が暴れれば体をはって止めにはいる,そういう真面目なタイプの人たちだったとか。
治安維持を目的とした「暴力」という手段,この手段を奪われた刑務所は,一体どうなっていくのでしょう。不良受刑者がやりたい放題をし,ほかの受刑者が迷惑を被る状況が目に浮かびます。学校で学級崩壊があったように,刑務所崩壊となるのでしょうか。

※参考リンク
刑務所の正体←クリック
名古屋刑務所事件←クリック

3.警察官の暴力

2004年に次のような事件がありました。
以下asahi.comからの引用
 「警視庁の警察官に背後から撃たれ、脊髄(せきずい)損傷で歩行不能になった」として、中国人の男性服役囚(34)が東京都を相手に約3700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。綿引万里子裁判長は「男性は職務質問から逃れようとして撃たれたが、発砲時点では警察官に危害を加える状況になく、発砲行為は必要な限度を逸脱している」と述べて、636万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は97年に日本に密入国して中国料理店で働いた後、ピッキング窃盗団に加わった。02年1月、東京都板橋区の路上で、志村署の私服警察官に職務質問を受けた際、抵抗して警察官に暴行。逃走しようとして背中を拳銃で撃たれた。男性はピッキングの用具を持っていた。

 判決は、傷害容疑などでの現行犯逮捕が適法であることは認めたが、男性の背中に向けての発砲は警察官職務執行法に違反すると結論づけた。ただ、直前の抵抗が発砲につながったとして損害の3割を過失相殺した。

 男性は、出入国管理法違反や窃盗などの罪で懲役4年の判決を受けて確定している。


違法入国してピッキング強盗を繰り返していた男でもきちんとした対応をする日本はスゴイ(^^ゞ
しかし,この判決はいかがなものか。
警察官が発砲できる条件は詳しく定められているのでしょうが,首を絞めて逃走をはかる怪しい人物をそのまま逃がすわけにはいきません。警察官が発砲しないのをわかっているなら,犯罪者としては楽なもんです。私としてはこの状況では発砲やむなしと思います。

その後,この件は東京高裁に控訴され,警察官の発砲は合法だとの判決が下されました。
やはりそうですよねえ。警察官には日本の治安を守るために頑張ってもらいたい。
今回の警察官はさらなる犯罪を防いだという意味でもとても良い仕事をしました。

※参考リンク
毎日ニュース←クリック
警察官職務執行法←クリック