国を必要としない人々がいてもいい

今の世の中で,国に所属していないという人は存在するのだろうか?
戸籍が作られなかった,亡命したなどの理由により,無国籍者として暮らす人はいるかもしれないけれど,ある集団まるごと国には所属しないという事がある得るのかどうか,気になります。今はどんなジャングルの奥地に住んでいる人であろうと,必ずどこかの国の国籍を持っているような気がします。

必ず国に所属しなきゃダメなんだろうか?
所属しないとなにかデメリットがあるのだろうか?


中国は多民族国家です。56の民族がいます。一番多いのが漢民族で92%を占めます。そして残りの55民族は少数民族と呼ばれています。少数民族とはいえ,同じ民族が別に国を作っている民族もいて,少数民族=マイノリティとは言えない感じです。例えば朝鮮族モンゴル族などがいます。朝鮮族は約200万人,モンゴル族は約480万人ですね。しかし,なかには本当に少数の民族もいます。例えばロッパ族などは2000人ほどしかいません。

※中国の少数民族については↓のサイトを参照して下さい。
チャイナネット・中国の少数民族
中国まるごと百科事典・中国の少数民族
中国の少数民族
中国の少数民族と民族衣装
電脳写真館

さて,人口はとりあえず置いておくとして,彼ら少数民族は果たして自らすすんで国家に所属する道を選んだのでしょうか?私はそのあたりに疑問を持っているのです。国家に所属しなくても何の問題もない人々,国家を必要としない暮らしを営む人々がかつてはたくさんいたはず。

おそらく多くの少数民族は国に属する事に対して無関心だったのではないでしょうか。これまで自分たちの世界になかった概念だし,自分たちの生活がより良くなるならば受け入れましょうと言うくらいの事だと思います。所属すれば,メリット・デメリット両方あります。デメリットとしては,先祖代々受け継がれてきた文化や環境が破壊される恐れがあること,使途のはっきりしないお金を徴収されること,など。メリットとしては,高度な医療を受ける機会が得られることなどが挙げられます。中国では少数民族を優遇する制度があるので,デメリットはかなり抑えられています。そういうことで中国人になることを受け入れた少数民族が大多数だと思われます。(中国人にされた事を不満に思っている人々については今回は言及しません。)


国の特徴とは一体なんでしょう?国土かなとも考えましたが,国じゃなくてもその集団が支配する領域というものはあるから,国という集団固有のものとは考えにくい。軍事力もまた同じで,国じゃなくても戦士の集団がいたりして,それなりの軍事力を持つ事は可能。

では,貨幣はどうだろう?少し前だったら,貨幣をつくるというのは国という集団固有のものと考える事ができたかも知れませんが,今はユーロという欧州共通通貨があるので,これが国の特徴だと断じる事はできません。ただ,「お金」というのは国を論ずる上ではかなり重要な意味を持っているのも事実でしょう。国を造る意志の表明の1つとして独自の貨幣を鋳造するということがあります。現在は中国に組み込まれているチベットもかつては貨幣を持っていたように。
チベット貨幣

国という集団の持つ特徴の1つに税金もあります。国はその構成員である国民から税金という形でお金を集め,そのお金によって公的な事業を行います。最も大事なのは上下水道の整備などインフラの充実です。それから,教育や国民の生命や財産を守るためのあらゆる施策があります。

国ではない集団にそのような事は行われていたのでしょうか?教育などは親から子へ,長老から若者たちへと言うように,それなりの事が行われていたような気がします。公共事業はどうでしょう。必要に応じて集団構成員が自分の財産や労働力を提供し,公的な事業に協力していたかも知れません。おそらく国以外では税金のようなものはない。王に対する貢ぎ物のようなものはあるかも知れませんけど。


日本にもかつて国を必要としない人々がいました。そう,アイヌ民族です。別に文字なんかいらないし先進の技術だって欲しくはなかったアイヌ人。しかし,大和民族は彼らの土地に土足で入り込み自分たちの文化を押しつける政策を進めていったのです。その点,今のチベットととても良く似ています。ただ,チベットアイヌの違いもあります。それは,アイヌは別に国家を作る意志はなかったと言うことです。自分たちの文化や先祖から受け継いだ土地さえ保障してもらえるならば,名目上日本人になってもなんら問題はなかった。たぶんそれがアイヌ民族の気持ちだったでしょう。ところが大和民族は次々にアイヌの土地を奪っていきました。「謝罪しろ」「謝罪しろ」とうるさい国が多い昨今ですが,もし日本人が謝罪するならば,アイヌ民族にこそ謝罪すべきですね。とはいえ,今やアイヌ民族も日本人の一構成員ですから,謝罪することよりもむしろアイヌという仲間がいることをしっかり学ぶことの方が大切かも知れません。アイヌ民族もすっかり大和民族との同化が進み,今やその人口を把握する事もできなくなっているようです。おそらく2万人くらいだろうといわれていますが,アイヌ民族の定義さえはっきりしませんから,そういった説もほとんど無意味です。

アイヌに関するリンクを付けておきます。機会があれば私もしっかり目を通すつもり。

国際先住民族ネットワーク
:かつて参議院議員にもなった萱野茂さんの運営するサイト。アイヌ語のラジオ放送を聴く事ができます。
アイヌ文化振興・経済推進機構
アイヌの窓
AINU.INFO
北海道ウタリ協会
アイヌとして生きる
:とあるアイヌ女性の紹介。
二風谷
:かつてアイヌの里である二風谷をダム湖にするという計画がありました。その顛末です。
判決
:二風谷ダム裁判の判決です。



以上挙げたように,それぞれの国家で様々な経緯を得て,地球上に住むほとんどの人間は必ずどこかの国に所属するような状態になっています。国際法に,必ずどこかの国に所属すべきだとか書いてあるのだろうか?それとも,まず国土ありきで,国土に国民以外の人が勝手に住む事は許されないと言う事で,強制的にその国の人間にされてしまうのか。当たり前の事のようですが,何だか不思議です。「そんなこと誰が決めたんだよ〜」とツッコミを入れたくなります(笑)

ちなみに私は日本で日本人として生まれた事を幸運だと思っています。日本国に所属する事も肯定的にとらえています。ただ,かつて世の中には,国を必要しない人々がたくさんいて,それぞれがそれぞれの単位でそれぞれの文化を築いていたんだろうな〜なんて事を考えてみた次第です。