長江哀歌

長江は日本では揚子江という名で知られています。
その長江流域で今,中国は一大プロジェクトを進行中です。
それはダム建設。
三峡ダムという巨大なダムを造っています。

日本でもそうですが,ダム建設においては水没の憂き目にあう集落が出てきます。三峡ダムの場合はその規模が半端ではなく,最終的には500万人ほどが強制移転させられるとか。

『長江哀歌』はその三峡ダムにまつわる物語を描いた映画です。

原題は『三峡好人』。
「好人」とは「善人」,この映画には「善人」というか「悪気のない人」がたくさん出てきます。

悠久の長江の流れの前にあって,人の悪行のなんとちっぽけなことか。


主人公の一人ハン・サンミンは突然消えてしまった嫁さんを山西省から探しに来ます。もともと嫁さんは三千元で買いました。日本でも嫁不足の農村などでは中国から花嫁をもらうことが多いようですが,中国国内でも同じ事が行われているようです。中国の場合はよりクールですが。

ハン・サンミンは慣れない土地で奥さんを捜します。奥さんの兄まではたどり着くものの,本人とはなかなか連絡が付きません。そこで,解体工事などの仕事をしつつ,しばらくその地にとどまることにします。

彼のもとにはいろんな人が近づいてきます。『男たちの挽歌』を愛するチンピラ,女を斡旋するやり手婆。

やり手婆は近所の奥さん連中を束ねており,ハンさんに一人の奥さんを斡旋します。ハンさんは女性を買い,奥さんは自分の家にハンさんを連れて行きます。家には旦那さんがいましたが,ハンさんと旦那さんは普通に挨拶を交わし,旦那さんは外出します。みんな「善人」です。

街で出会ったチンピラは「今日は仕事で隣の村で一人殺してきた」と笑顔で挨拶し,知り合いたちにうさぎ印のキャンディを配ります。みんな「善人」です。



偉大なる長江の流れとともに中国人の時間は淡々と流れていきます。


長江哀歌公式サイト