掲示板における侮辱罪

まずは,2007年10月1日の毎日新聞の記事を全文引用

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<ネット流出>掲示板に書き込み、
侮辱容疑で医師を書類送検

奈良県大淀町大淀病院で昨年8月、
分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、
19病院で転送を断られた末に死亡したTさん(当時32歳)
=同県五條市=の診療情報がインターネット上に
流出した問題で、流出した医師専用掲示板に
Tさんの夫の名誉を傷つける書き込みをしたとして、
奈良県警が東日本在住の医師を、刑法の侮辱容疑で
奈良地検書類送検したことが1日、分かった。
県警は診療情報の流出についても慎重に捜査している。

県警などによると、医師は、Tさんの死亡が報道された
昨年10月、医師専用掲示
「m3.com Community」に、
夫を中傷する内容の書き込みをした疑い。

掲示板はソニーグループの「ソネット・エムスリー」
(本社・東京都港区)が運営する医療専門サイト内に、
医師同士の率直な意見交換の場として設置された。

医師会員数は今年3月末の時点で、
約14万6000人にのぼる。
国内最大級の医師専用インターネット掲示板で、
書き込みの閲覧人数も多く、県警は夫に対する
医師の中傷が不特定多数に広まったと判断したとみられる。

この掲示板を巡っては、運営会社が今年5月、
利用規約に反する中傷などの書き込みがあったとして、
掲示板を一時閉鎖した。
同社は「全投稿のチェックシステムなど改善策を整えた」
として、「Doctors Community」に
掲示板の名称を変えて再開した。

掲示板には、Tさんの病歴情報、診断内容の詳細、
看護記録、医師と遺族のやり取りなどが
書き込まれたことが判明している。
診療情報の流出を受けて、Tさんの遺族は今年4月、
県警に刑事告訴する方針を明らかにしていた。
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この記事,先日書いたセイクラブのお知らせに通じる物があります。
タイトルにおいて〈ネット流出〉を打ち出していますが,明確な説明が抜けています。いったい誰が流出させたのか,一番重要な部分が抜けています。

この記事のきもは,掲示板においてある医師が中傷発言をしたところ,侮辱罪に問われたという点です。この記事を読むと,この医師が中傷発言とともに情報流失までも行ったように感じてしまいますが,そこがしっかりと書かれていません。掲示板において情報流出があったから遺族は4月に刑事告訴する方針を明らかにした。その結果,一人の医師が侮辱罪で書類送検されたという流れなのですが,情報流出と中傷発言がごちゃごちゃになっています。

毎日新聞さん,記事はわかりやすく正確に書いてください。
これでは,掲示板をおとしめてやろうという作為があるのではないかと疑われても仕方がありません。



さて,今回,私が注目した点がもう一つあります。
それは掲示板における中傷発言に侮辱罪が適用されたこと。

今回中傷発言をした医師と中傷されたTさんの遺族の間には何の関係もありません。医師としてはいわば社会問題について掲示板で語っていただけです。

そして,Tさんの遺族は個人が特定できますが,医師は匿名で発言していました。このような状況でも立件があり得るのだとちょっと驚きました。

おそらくこの掲示板は医師専用の掲示板であり,社会的な影響が大きいということで,司法も動いたのでしょう。

イクラブで社会問題について語っても,侮辱罪で書類送検なんてことはまずあり得ないでしょうね。社会的影響は皆無だし(^^ゞ

ちなみに,セイクラブでは個人間で中傷し合う状況が多々ありますが,侮辱罪や名誉毀損罪で立件されることはまずないでしょう。
その理由は個人が特定できないから。
現段階においては匿名に対する名誉毀損はあり得ないのです。

有名なニフティサーブ事件という物がありますが,あれは表面上は匿名の参加ですが,容易に中傷された側の本名を知りうる状況にありました。だから立件が可能だった。


※参考サイト
元検弁護士のつぶやき
ニフティ名誉毀損事件の論点