セックスボランティア(成人のみ閲覧可)

セックスボランティア』という本を読みました。

本書はセックスボランティアというタイトルですが,描かれている内容はそれに留まらず,読者は障害者の性を通し,自らの性と向き合うことになります。

本書には性と向き合う様々な障害者が登場します。
第一章で登場する脳性麻痺の竹田芳蔵氏は「性は生」と達観し,
自慰の介助を頼んだり,障害者年金をやりくりして年に数回ソープランドに出かける人。
彼にとって介護を受ける事は屈辱ですが,それでも性の快楽を満喫する道を選んでいます。

セックスボランティア』の著者である河合香織さんは,一本のビデオを見た事がきっかけでこの本を書きました。そのビデオに映っていたのが介助を受けながら自慰をする竹田芳蔵氏だったのです。

そういえば,以前ある写真展で,これに類似するビデオが上映中止になるという事件がありました。
横浜美術館の失態?←クリック
横浜美術館の失態?←クリック
『木村さん』について←クリック


先のビデオの中で自慰の介助をしている社会福祉士の佐藤英男氏は「なんてことはありませんよ。特別な事だと思った事はありません」と語ります。
佐藤氏が所属するNPOノアール←クリック

本書は第八章まであり,ネット掲示板で自慰の介助をしてくれる女性を探す男性,出張ホストを手配してセックスする女性,介助されながらセックスする障害者夫婦,障害者専用風俗店などが紹介され,さらにはオランダの状況なども紹介されます。オランダは売春が合法で,地方自治体によっては障害者にセックス助成金を出しているとか。

本書を読んでこれがポイントかなと思った事を箇条書きにしてみましょう。

1.セックスは人生においてそれほど重要な事か。
2.性の提供はボランティアよりもビジネス感覚で行った方がよいのでは。
3.男性と女性では違いがあるのか。
4.障害者と健常者では違いがあるのか。

1.セックスは人生においてそれほど重要な事か?
 第一章に出てくる竹田氏は「性は生」と達観しています。確かにセックスは気持ちがいいし,人間にそのような機能が備わっている以上,かなり重要なものには違いがありません。しかし,「障害者にも性欲がある」のも事実なら,「淡白な障害者もいる」のも事実。全ての障害者に対し,セックスあるいは自慰をする機会を提供するべきだとは思いません。特に知的障害者の場合,それを教える事が却ってその人を不幸にする可能性もあります。セックスの無い人生だって良いじゃないですか。あるに越した事はないけれど。
2.ボランティアかビジネスか
 ボランティアで性の介助をしてもらう場合,障害者には「同情」「お情け」という気持ちがつきまとうようです。屈辱感を伴った快楽。そんな思いをするよりも金銭で割り切って性欲を解消した方がいいような気がします。
 また,性交まで行う場合,普通のボランティア活動と違って,どうしても互いの感情の部分が刺激されてしまうようです。障害者側がボランティアに恋愛感情を抱いてしまう事もあれば,ボランティア側が「これが本当にボランティアと言えるのだろうか」と悩むこともあるでしょう。
 セックスか自慰の介助かという違いもあるでしょうが,異性に対するセックスボランティアはやはり避けるべきだと感じます。
3.男性と女性の違い
 上で述べたこととも重複しますが,女性はセックスのボランティアという言葉だけでも傷つくものらしい。それはそうでしょう。「お情けでしてもらっている」なんて思いつつその行為を行うのは男性であっても辛いでしょうから,女性ならなおさら。男なら「ラッキー♪」と思う人も多いかも。
4.障害者と健常者の違い
 何かに恵まれない人に手を差し伸べるのがボランティア。障害者に対するセックスボランティアがあり得るのならば,健常者に対するセックスボランティアもあり得るのでは?健常者は努力すればその機会を得られるという意見もあるでしょうが,障害者だって努力すればその機会は得られます。その機会は金を払う事によって得られる事もあるし,その点でも障害者と健常者にはほとんど違いがありません。健常者だって売春が禁じられている日本において(例外はありますが),有料・無料を問わず,障害者にセックスを提供すること自体に違和感があります。
 もっとも障害者は健常者よりも性に対する興味が旺盛という事はあるかも知れません。つまり行動範囲や世界が健常者よりも狭くなる為に,興味の対象が自分の体に向けられる事が多い。定年退職した老人が「あっちが痛い,こっちが痛い」といいながら病院通いをするのも,世界が狭くなった為に自分の体に意識が向くようになった為です。

私の結論
ことさら障害者の充実した性生活に配慮する必要はないが,障害の種類によっては,障害者のセックスをタブー視することなく,障害者の尊厳が傷つけられないよう,その性欲を解消するための何らかの手助けをする必要はあるかもしれません。


↓は以前書いたものの再録
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
以前,とある病院でちょいとショッキングな言葉を聞きました。
障害者の付き添いの女性から出た言葉です。

「この子,一人前に男に興味があるんですよ」

この言葉はかなりショッキングでした。
はっきり物を言えない障害者にだって性欲はあるし恋愛だってするという当たり前のことに今まで気が付かなかった事へのショックと,そういうことを一番理解しているはずの付き添いの女性からそんな言葉が出たことに対する二重のショックです。

そう,障害者にも性欲があるのです。性欲というのは人間が生きていく上でかなり重要なものです。ただ,あまり大っぴらにするものではない。秘め事は秘するからこそ楽しいのです(^^ゞ

それはさておき,最近は障害者の性というものもかなり理解される方向に来ているようです。ホーキング青山という芸人もこのテーマで本を書いているし,障害者専門や障害者にも対応できる風俗店もたくさんできているようです。

障害者イズム
AIKI
あゆみのGENKIにきらきら☆ぱらだいす