福岡三児死亡事故の判決

結局,危険運転致死傷罪の成立は認められず,
求刑懲役25年に対し,懲役7年6月の判決となりました。
適用されたのは,業務上過失致死傷罪と道交法違反(酒気帯び運転,ひき逃げ)。

なくせ飲酒運転


遺族はずっと最高刑を求めていました。
三人の愛する子供を殺されたのですから当然でしょう。
しかし,法律はクールだし,クールでなくてはなりません。
裁判長としては苦渋の選択だったでしょうが,
結局は危険運転致死傷罪は適用できなかった。

さて,危険運転致傷罪とはどんな法律なのでしょう。
その条文を転載します。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
危険運転致死傷)
刑法第208条の2
アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

構成要件としては次のものが挙げられます。
1.酩酊状態
2.スピードの出し過ぎなどの状況で車を制御できない。
  あるいは片手を骨折するなどの状態で車を制御できない。
3.割り込み・幅寄せ・煽り行為。
4.信号無視

今回の裁判では1の「酩酊状態」だったかどうかが争われていたようです。裁判長は結局酩酊状態ではなかったと判断し,業務上過失致死を適用せざるを得なかった。被告の運転は「脇見運転」とされたのですが,「脇見運転」は危険運転致死傷罪の構成要件にはなかったのです。つまり,「脇見運転」は危険運転とは認められていないわけですね。

現在の法律,あるいは判例においては今回の判決は仕方がない部分もあるのでしょうが,今後は改善の余地はあるかと思います。殺した側に非があるのであれば,多くの場合,危険運転致死傷罪を適用しても良いのではないでしょうか。最高刑は20年とはいえ,最低刑は1年なんですから,適用に躊躇するようなものには思えません。